在宅血液透析


在宅血液透析(HHD:Home HemoDialysis)は、現在急速に普及している透析療法で、ご自宅で血液透析を行う方法です。

2017年末時点で、全国で683 名の患者さんが治療を行っており、年々患者数の増加が見込まれています。

日本透析医学会『わが国の慢性透析療法の現況』より作成
日本透析医学会『わが国の慢性透析療法の現況』より作成

在宅血液透析とは


在宅血液透析は、医療施設の管理のもと、 患者さん・介助者が協力して家庭で透析を行う治療法です。

そのため、安心して在宅血液透析を行うために、患者さんと介助者は、透析の知識や技術などの習得が必要となります。

透析量を増やしたり、自分にあったスケジュールで治療を行うことで、更なる予後の改善が見込まれます。


在宅血液透析のメリットとデメリット


在宅血液透析を導入するためには、患者さんご自身がメリットとデメリットを理解し、選択することが大切です。

メリット


◆長時間透析や頻回透析で十分な透析治療をおこなえる。

  • 食事や水分の制限が緩和され、栄養状態の改善が見込まれます。また、栄養状態の改善により、感染症などへの抵抗力の上昇も見込まれます。
  • 透析不足による合併症のリスクが低減し、生命予後が改善される可能性があります。腎性貧血・高血圧・かゆみなどの改善も見込まれます。
  • 十分に透析することで内服薬の減量が見込まれます。

◆自由な透析スケジュールで透析治療をおこなえる。

  • 社会復帰、就業、育児、家事など、自由の幅が広がります。
  • 就寝時間を透析に利用出来るので自分の時間が増えます。
  • 透析中の時間をより自由に使え、家族と過ごせる時間が増えます。

デメリット


◆自己決定・自己責任でおこなう必要がある。

  • 自己穿刺が必要となります。

◆介助者、工事・保管場所が必要となる。

  • 透析中に介助者1名の確保が必ず必要となります。
  • 在宅血液透析のための電気代・水道代の負担が必要になります。
  • 毎月の物品管理や保管場所、機械設置のために最低限の工事が必要です。

在宅血液透析の透析量


血液透析療法では、一般的に週3回4時間の治療が標準透析とされています。

しかし、この週3回4時間の治療効果には根拠が無く、いわば必要最低限の透析量と言えるでしょう。

在宅血液透析では、社会復帰を大きな目的として、日常生活をもっと快適に、合併症の無いように生活するために、より多くの透析量を確保することができます。

より多くの透析量を確保するための指標として、HDP(HemoDialysis Product)と呼ばれる考え方があります。

HDPは、次の計算式により計算されます。

HDP = 1回の透析時間x(週の透析回数x週の透析回数)

これによると標準透析と言われる週3回4時間の透析は、[標準透析HDP:1回4時間 ×(週3回x週3回)= 36 ]となります。

しかし、HDPは70以上が望ましいとされており、当クリニックでも[HDP:70以上]を推奨しています。

様々なスケジュールによる在宅血液透析のHDP


1.隔日透析・・・2日空きを作らない透析

例)隔日透析HDP:1回5時間x(週3.5回x週3.5回)= 61

2.長時間透析・・・1回の透析時間を延長した透析

例)長時間透析HDP:1回6~8時間x(週3回x週3回)= 54~72

3.深夜(オーバーナイト)透析・・・夜間睡眠時におこなう透析

例)深夜透析HDP:1回8時間x(週3回x週3回)= 72

4.頻回透析・・・週5回以上おこなう透析

例)頻回透析HDP:1回3時間x(週5回x週5回)= 75

5.連日透析・・・連日おこなう透析

例)連日透析HDP:1回3時間x(週7回x週7回)= 147

6.長時間頻回透析・・・長時間透析と頻回透析を組み合わせた透析

例)長時間頻回透析HDP:1回6時間x(週5回x週5回)= 150

在宅血液透析の適応条件


以下のような基準を参考に導入を検討します。

  • 本人の強い希望があること。
  • 介助者が確保され、同意していること。
  • 介助者以外の家族も協力的であること。
  • 在宅血液透析の教育訓練を受けることができること。
  • 在宅血液透析の教育訓練の内容を習得する能力があること。
  • 安定した維持透析が実施できること。
  • 在宅血液透析実施のうえで支障となるような合併症がないこと。
  • 年齢は16歳~60歳程度が望ましい。
  • 社会復帰の意思があること。
  • 透析を実施する部屋や材料の保管場所が家庭内に確保できること。

あわせて「在宅血液透析開始までの流れ」と「在宅血液透析Q&A」の内容もご確認ください。

大分県腎協会報「ゆふ」2019年6月号


大分県腎協会報「ゆふ」2019年6月号に在宅血液透析にまつわる記事が掲載されました。